白露は、ミレイアの屋敷で“愛されて”いた。
豪奢な部屋、甘い言葉、魔法の拘束具。
「君は僕の宝物だよ。誰にも渡さない」
その言葉に、白露は微笑みながらも、心の奥で叫んでいた。

——零に会いたい。

ミレイアの魔法《百愛牢》は、感情を封じる呪い。
愛されるほど、自由を失う。
白露は、零との記憶を少しずつ忘れていく。
それでも、拳の感触だけは残っていた。

「痛かった。でも、あれが……温かかった」

一方、零は屋敷の外で、魔導障壁を拳で殴り続けていた。
血が流れ、骨が軋む。
だが、拳は止まらない。

「白露は……アタイの親友だ。アンタの玩具じゃねェ!!」

その叫びが、百の檻を揺らす。