魔導都市《エル=ヴァルム》
空に浮かぶ宮殿と、地に沈むスラム。
魔力の数値がすべてを決めるこの世界で、魔力ゼロの少女・零(ゼロ)は“存在しない者”として扱われていた。

「魔力が無いなら、魔法も使えない。魔法が使えないなら、人間じゃない」

そんな言葉を浴びながら、零は拳だけで生きてきた。
地下闘技場で血を流し、骨を砕き、勝ち残ることでパンを得る。
その日々の中で、唯一の光があった——白露(しらつゆ)
同じ孤児院で育った、魔力持ちの少女。
彼女は零に魔法を教えようとし、零は拳で魔法を拒絶した。

「アタイに魔法なんか要らねェ。拳で十分だ」

だがある日、白露は“上”に連れて行かれた。
最上級魔導士・ミレイアの屋敷へ。
理由はただ一つ——「可愛いから」「愛してるから」

零はその言葉に、吐き気を覚えた。

「愛? それで檻に閉じ込めるのかよ」

地の底から、拳を握りしめて、零は立ち上がる。
魔力ゼロの反逆が、今始まる。