冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

 古東さんの電話を社長室へ転送すると、「うるさいな!」と怒ったような照れたような社長の大声が聞こえてくる。
 その珍しい声を聞きながら、私はパソコンのキーボードを軽やかに叩く。

(タイトルはどうしよう。……いやいや、ちょっと待て、私)
 
 今は勤務時間中だ。仕事をする時間に社長と私の個人的なことを考えるのは、いくらなんでも不謹慎なので私は慌ててファイルを閉じた。
 
(退勤後、一緒に考えてもらおう)
 
 そう考えたら、残りの仕事に対するモチベーションが急上昇していく。いつもなら面倒だと思う書類作成の仕事も、今ならいくつでもこなせそうな気分だ。
 
(だって……!)
 
 これをひとつずつ終わらせていけば、もうすぐ社長――じゃなくて、光輝さん――の笑顔を独り占めできるのだから。
 そして早く私を独り占めしてほしい。
 
 社長室の白いドアをチラッと見て、私はこれ以上ないほど幸せなため息をついた。

《END》