冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

「……はい、かしこまりました!」

 私の肩をつかんでいた手がパッと離れ、社長を取り囲む女性陣も互いに顔を見合わせ、そして一斉にこちらへ視線を向けた。
 みんなの注目を集めてしまった私は、精一杯の作り笑いを浮かべ、自分のデスクへ戻ろうとする。
 しかし、今度は複数の手が私の腕を引っ張り、行く手を阻む。

「唯子、仕事終わったら話があるんだけど」
「あはは……なんの話かな?」
「覚悟しなさい。とぼけていられるのも、今のうちだから」
「あはは……」

 そろそろ休憩時間が終わる。
 みんながそれぞれの部署に帰っていった後に、古東さんから電話が来た。
 社長に取り次ごうとすると「後藤さん」という冷静な低い声が受話器から聞こえてくる。

『ミュージカルは楽しんでくれた?』
「はい! あの、本当にありがとうございました」
 
『俺、キューピッドになるつもりは全然なかったんだけど』
 
 古東さんのぼやく声に私は思わず笑ってしまった。
 
『光輝に伝えてよ。「この借りは必ず返せよ」って』
「はい。承りました」
 
『それから後藤さん。アイツ、すごくわがままなヤツだけど、よろしくね』
「はい。承りました」