冷酷社長の極上笑顔は私が独り占めさせていただきます

「コーヒーの差し入れとはありがたい。ちょうど飲みたいと思っていた。助かるよ」

 私の手からひったくるようにコーヒーを奪ったのは社長だった。
 彼の姿を見た両チームのメンバーたちは歓声を上げる。

「お疲れさまです!」
「みんなで飲もう。狭いけど、中へどうぞ」

 社長が社長室のドアを開け放つ。私はそそくさと脇へよけた。
 二つのチームメンバーが和気あいあいと社長室へ入っていくのを見送りながら、何が起きたのか、理解が追いつかず、唖然としていた。
 
 戸口に背中を預けた社長は、私に小声で「どうした?」と問う。
 
「何が起きたのでしょう?」
「君が望んだこと、かな」

 それを聞いて、私はピンと来た。

「もしかして、見せちゃったんですか?」
「君が好きだって言ってくれたから、出し惜しみするものではないかと思ったが……怒っているのか?」

 社長はコーヒーのカップを持ったまま、私の顔をじろじろと観察する。
 確かに、なんだかおもしろくない。
 コーヒーの差し入れなんて女性社員の発案っぽいし、実際両チームとも女性社員の比率が高いのだ。

「いいえ、とてもいいことだと思います」
「それならなぜそんなに怖い顔をしている?」

(怖い顔――!?)
 
 そんなことはない。私は嬉しくて微笑んでいるのだから。
 まさかこんなに早く願っていた光景が見られるとは思わなかった。
 しかし、心の声がダダ漏れてしまうのは止められなかった。