あれから、私たちの穏やかな交際が始まった。

圭佑さんは仕事の合間を縫って、よく私のオフィスに迎えに来てくれた。

最初は同僚たちも驚いていたが、今では私たちを温かく見守ってくれている。

「新谷さん、本当に幸せそうな顔をしているね」

田中主任がよく言ってくれる。

「ありがとうございます」

私は素直に答えられるようになった。もう、自分の気持ちを隠す必要はない。

圭佑さんとのデートは、いつも自然体でいられる場所ばかり。

美術館、映画館、時には彼のロードバイクの後ろに乗せてもらって多摩川沿いを走ったり。

「君といると、本当の自分でいられる」

彼がよく言ってくれる言葉だった。そして、私も同じ気持ちだった。



交際を始めて三ヶ月が経った頃、圭佑さんが真剣な表情で切り出した。

「梓、君に会ってもらいたい人がいる」

「会ってもらいたい人?」

「俺の両親だ」

その言葉に、私の心臓が跳ね上がった。

「え、でも……」

「大丈夫。君なら、必ず両親も理解してくれる」

圭佑さんは私の手を握って、優しく微笑んだ。

「俺は、君と結婚したい。だから、ちゃんと両親に紹介したいんだ」

その言葉に、私の目から涙が溢れそうになった。

「はい。ぜひ、お会いしたいです」