あれから、私たちの穏やかな交際が始まった。
圭佑さんは仕事の合間を縫って、よく私のオフィスに迎えに来てくれた。
最初は同僚たちも驚いていたが、今では私たちを温かく見守ってくれている。
「新谷さん、本当に幸せそうな顔をしているね」
田中主任がよく言ってくれる。
「ありがとうございます」
私は素直に答えられるようになった。もう、自分の気持ちを隠す必要はない。
圭佑さんとのデートは、いつも自然体でいられる場所ばかり。
美術館、映画館、時には彼のロードバイクの後ろに乗せてもらって多摩川沿いを走ったり。
「君といると、本当の自分でいられる」
彼がよく言ってくれる言葉だった。そして、私も同じ気持ちだった。
◇
交際を始めて三ヶ月が経った頃、圭佑さんが真剣な表情で切り出した。
「梓、君に会ってもらいたい人がいる」
「会ってもらいたい人?」
「俺の両親だ」
その言葉に、私の心臓が跳ね上がった。
「え、でも……」
「大丈夫。君なら、必ず両親も理解してくれる」
圭佑さんは私の手を握って、優しく微笑んだ。
「俺は、君と結婚したい。だから、ちゃんと両親に紹介したいんだ」
その言葉に、私の目から涙が溢れそうになった。
「はい。ぜひ、お会いしたいです」



