【圭佑side】

梓を駅で見送った後、俺は一人タクシーの中で今日のことを振り返っていた。

雨が降り出した瞬間、俺は迷うことなく自分のジャケットを彼女の頭上にかざした。

梓が雨に濡れるのを見るくらいなら、俺がずぶ濡れになる方がましだ。

彼女を守りたい──その想いが、俺の中で日に日に強くなっている。

今日、彼女を『ラ・カーサ』に連れて行ったのは、彼女だけに自分の大切な場所を見せたかったからだ。

あそこは、俺が一人の時間を大切にしたい時に通う、特別な店。

オーナーは桐原家とのつながりを知っているが、俺は彼に口止めをしている。梓の前では、ただの客として振る舞いたかった。

でも、いつまで隠し通せるだろうか。

彼女に自分の出自を話すのは、まだ早すぎる。

彼女が俺の財産や地位に惑わされることなく、純粋に俺という人間を愛してくれることを確かめたい。