家に帰った後、私は今日の出来事を反芻していた。
圭佑さんといると、今まで感じたことのない感情が心の奥から湧き上がってくる。
安心感、高揚感、そして……独占されたいという不思議な欲求。
『梓さんだけに見せたかった』
あの言葉を思い出すたびに、胸が熱くなる。
でも、同時に不安も募っていた。
あのレストランでの彼の立ち振る舞い、流暢なイタリア語、時折見せる複雑な表情。
圭佑さんには、まだ私の知らない顔があるような気がした。
それは、彼が隠している何か大きなものかもしれない。
でも──今はそれでもいい。
今日見せてくれた彼の優しさ、私を特別扱いしてくれる気持ち。
それが本物だと信じたい。
スマホを見ると、圭佑さんからメッセージが届いていた。
『今日は本当に楽しかったです。また近いうちに、お会いできますか?』
私は迷うことなく返信した。
『はい。私も楽しみにしています』
送信ボタンを押した瞬間、自分の頬が熱くなっているのに気づいた。
これが恋なのかもしれない。
初めて、誰かを本当に好きになったかもしれない。



