「また今日もダメだった……」

スマホを乱暴に放り投げ、秋の夕暮れが金色に染める窓辺を背に、私は疲れ切った体をソファに沈めた。

「はぁ……」

深いため息が漏れる。

今日で何回目だろう。期待していた展開にならない、婚活パーティーは。

「春菜、今回のプロジェクトは大成功だったのに、婚活は今日も全敗だよ……」

電話の向こうで、親友の望月(もちづき)春菜(はるな)が苦笑いしている気配が伝わってくる。

鎖骨にかかる長さの内巻きストレートボブが、スマホを握る首元で静かに揺れた。

普段は前髪をすっきりと横に流してクールビューティを演出している私だが、今は疲れ果てた一人の女性でしかない。

「梓、また今日も『お仕事頑張ってるんですね』のパターン?」

「そう。プロジェクトマネージャーって言った瞬間、みんな微妙な顔するの」

リビングのテーブルの上には、今日参加した婚活パーティーのパンフレットが無造作に置かれている。

『理想のパートナーと出会える!』なんて謳い文句の横に、パステルピンクのワンピースを着た私の姿が映り込んだ鏡がある。

普段の黒やネイビーのパンツスーツとは正反対の、女性らしい服装。

でも、この格好をしている時の私は、どこか演技をしているような気分になってしまう。