推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜


「なんか俺らこれ悪いことしてる奴らみたいやない?笑」
「本人の同意があればいいんじゃない?」

「なんかそれはそれでいよいよ悪いことしてるみたいやな」亮ちゃんが笑う。「えっと…お送りしてもよろしいでしょうか?」

「…よろしくお願いします…」
「よし行こう」
「よし行こう」
佑月くんも後部座席に私の反対側から乗り込み、亮ちゃんが運転席に座る。

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後部座席に転がる私。鼻水ずびずびで髪の毛もボサボサ、極めつけにだるま。

あ〜……2人に会えるならもっと、まともな格好の時が良かったなぁ……と今更思った。

佑月くんが私にブランケットを掛け直して、ぽんぽん、ってする。

私の…推し…。そして今や、命の恩人……。


「ありがとうございます…助けてくれて。」
「うん、いいよ。」
「佑月く…瀬名さんと三上さんのおかげで、命拾いしました」
佑月くんがフ、って笑う。

「佑月くんって呼んでよ。」
し、しんどい。いろんな意味で。


「あの…窓開けてもらえますか…」
「あ、ごめん。ちょっと煙草くさいよな。」
亮ちゃんが窓を開ける。
「あいや、そうじゃなくて。風邪うつしちゃったら大変なので換気を…。」
亮ちゃんがバックミラー越しに私を見る。「あぁ、寒かったら言うてな。」