「あ、今どこ〜?あ、まじで?えちょっと車出してくんねぇ?」


声と振動で目が覚める。
私は佑月くんの肩にもたれかかっていた。

ヒィ……!って体を起こしかけるけど、頭がズキンとして、「ウッ」って声が漏れて、私はまた佑月くんに寄りかかる。

佑月くんが、スマホを耳から外す。
「いいよ、全然寄っかかってて」またスマホを耳に当てる。

「マナベが車持ってっちゃってさぁ〜電話も繋がんないんだよ。」

佑月くんが、誰かに電話してる。
佑月くんは誰に電話してるんだろう。
あと、マナベって誰だ。

佑月くんの声が、振動になって、耳から伝わる。それがすごく心地よい。
今は、人の温もりが、心に染みる。

「え、タクシー?呼んでるけど全然来ない!ねえお願いまじで緊急なの!」

わかった〜ありがとごめんね〜。佑月くんが電話を切る。


「ごめん、起こしちゃった?」

佑月くんがちらって私を見る。パーカーのフードを被って、マスクをつけた佑月くん。
「てかごめん、勝手に車呼んじゃった。病院行く?よね?」

「すみませんありがとうございます……。」

優しい…なんでそこまでしてくれるの…。熱が出て弱っているのかもしれない、優しさが沁みて涙が出そうになる。今は人肌の温もりが一層ありがたい。