推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜



佑月side


今日は事務所で打ち合わせ。


眞鍋がファンレターの入った紙袋を持ってきてドサッと置く。


「なんか佑月の多ない!?」
亮が俺の分を見て声を上げる。


「みんな佑月くんの魅力に気づき始めたんじゃないのぉ〜?」
姫希がにやにやしてる。


「ドラマ、ラジオ、雑誌の連載、バラエティのレギュラー……各メディアに引っ張りだこやもんなぁ」
亮がニコニコしている。


紙袋の中を見る。ふと目に留まったそれ。見たことある封筒だった。


“瀬名佑月くんへ”
身に覚えのある文字。手に取って、裏返す。


“宮部凛”の文字。


「あ!」姫希が声を上げる。「凛ちゃんだ!」


「えっ!」大樹が駆け寄ってくる。「あ、ほんとだ!」


「こんなファンレターじゃなくて、LINEすればいいのに。佑月が気づかんかった可能性だってあるのに」亮が言う。
「だからいいんじゃないすか」巧が言う。「佑月くんに届いたって思いたい時も、届いてないって思いたい時もあるじゃないですか」


眞鍋を見る。
こういうのって、事務所が中身を確認するもんでしょ?


「中は、見てません」眞鍋が言う。「見落としたってことで……」ごにょごにょと口籠る。