もし私が、もっと可愛くて、オマケに運も良くて、芸能界の人だったら。
そして、佑月くんと出会うタイミングがばっちりだったら、ずっと一緒にいれたのかな。

佑月くんがまた、大切にしたい誰かが出来たら。
その時は来ないかもしれない。でもいつか来るかもしれない。私は一体どう思うんだろう。

私は、いつか現れるかもしれない、誰かも知らないその人を想像して、嫉妬している。

もし、佑月くんがアイドルじゃなかったら——

『会社に勤めて、恋愛して、結婚して、それってどんな人生なんだろうなんて、考えるときもあります。』

東京の街並みを眺めながら佑月くんが呟いた言葉を思い出す。

もし佑月くんがアイドルじゃなかったら、今でも一緒に居れたのかな。


『もう、アイドル辞めちゃおうか。全部捨てて逃げちゃおうか。』
そんなこと、1ミリも思ってなかったくせに。


『でももし生まれ変わったら、もうアイドルにはならないかな。』


そしたら、佑月くん、生まれ変わったら、私はまた佑月くんを見つけ出す。
必ず見つけ出して、佑月くんを好きになる。その時は、佑月くんは私のこと好きになってくれるかな。
もし、好きになってくれたら、佑月くんが選ばなかった「普通の人生」とやらを、一緒に歩んでみたい。