社長が眞鍋を正面から見る。
「いま、20歳だっけ?」
「はい。」
ガチガチに緊張した面持ちで返事をする眞鍋。
「まだ若い。君はこれから何にでもなれる。」
優しい殻を被った残酷な台詞だな、と思った。
「でも、」
亮も引き下がらない。
「眞鍋にとって、この仕事は特別なんです。誰よりもステージが好きで、喜んでるファンの方が好きで、真っ直ぐで……」
「演者から裏方になるということがどういうことだか分かる?」
「それでも僕は、この仕事に関わりたいです。自分がステージに立たなくてもいいです。
この仕事の先に、ファンの方の笑顔があると思えるだけで、頑張れます。」
社長がポリポリ、とこめかみの辺りを掻く。
「あの……。実際にやってみて、判断して頂くというのは難しいですか?」
亮と眞鍋が俺を見る。
社長がまだ渋そうな顔をしているので俺は慌てて付け足す。
「給料無くていいです。お願いします。僕たちには眞鍋が必要なんです。」
俺が頭を下げると、亮と眞鍋も続いて頭を下げた。
「まあいいか。6ヶ月だよ。」と、社長。
「はい?」
頭を上げて社長を見る。
「試用期間、6ヶ月。」
「え、それって。」
亮と眞鍋の顔が明るくなる。
「ありがとうございます…!」眞鍋が頭を下げる。
俺は、ホッと胸を撫で下ろした。
「もちろん給料払うよ。」社長が笑った。
社長にも、マネージャーにも俺たちは世間知らずの若造に見えていただろう。



