この世界は綺麗なことばかりじゃない。
煌びやかな世界を想像して入って、そのイメージとの乖離に失望したこともある。
努力は必ずしも報われない。
時には正義も通用しない。
正解だってその時々で違う。

運も才能のうちとはよく言ったものだが、これほどまでに運と、それからタイミングで評価や将来が決まってしまう職業も珍しいだろう。


その不確実さや理不尽さを知ってもなお、俺はこの仕事が大好きだ。


ここにいれば俺は、好きな景色が見れる。それに、好きな人たちとだって一緒にいれる。


W/Uが結成され、3ヶ月が経とうとしていた。


あの日、選抜組から取り残されるように枕を並べて寝ていた俺たちは、どういう訳か同じグループになった。最近はほぼ毎日一緒にいる。あの時は微塵も想像していなかった日々が日常となりつつある。

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「うわぁ、ピクルス入ってる。」
佑月くんが亮くんを見る。
「ハンバーガーやもんそりゃ入ってるやろ。」
亮くんが言う。

「亮食べて」
「嫌やわ。いい加減好き嫌いしないで食えよ。」
渋々食べようとして、佑月くんが巧くんを見る。

「巧ピクルス……。」
「ええて、お前が食えって。」
亮くんが言う。
佑月くんが不貞腐れて、ため息をつく。
「お前は俺のオカンか。」


佑月くんが巧のことで選抜組にブチギレたあの日から約半年が経つ。
あの時の佑月くん、格好よかったなぁ。


この人たちは、この世界で自分の中の正義を曲げず、勢力にも迎合せず、ここまで来た、この世界で稀有な存在だと思う。