推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜



俺の時は、言ったら話を無かったことにされたのに。今回はいとも簡単に変更が加わった。


そうか、巧だからだ。だからあの時とは状況が違う。巧にかけられている期待の大きさが俺とは桁違いに大きいんだ。当時俺の代わりはいくらでもいた。でも巧は違う。巧の代わりは他に居ない。巧、お前は本当にすごいよ。
巧を見ると、いつもと変わらず涼しい顔で座っていた。口元だけは、緩み、安心して微笑んでるように見えた。


佑月が部屋に入ってくる。
メンバー表の一番下に、「瀬名佑月」と手書きで書き加えられる。


俺は、佑月に見られないように、涙を拭いた。


佑月が俺の隣に座り、メンバー表を見てプ、って笑う。
「何、俺、補欠合格?」佑月が俺に耳打ちをする。



「でも合格は合格や。」
俺は、佑月に抱きついた。