推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜



「俺、佑月さんも一緒がいいです。」
言ったのは巧だった。
当時巧は高校3年生。
大人たちが話を進める中、突然そう言い放った。

——佑月と一緒やなかったら、やりたくありません。

19歳のときの自分が、巧に重なる。


巧、駄目だ。それ以上言うな。

「佑月さんが一緒じゃなかったらやりたくありません。」

巧の声にはピンと張った糸のような繊細さと、強さがあった。

お前……。俺は顔を手で覆った。


「……俺も。」
振り絞るようにして、続いて震える声を発したのは、太一だった。


「俺も、佑月くんも一緒がいいです。」


俺は、泣いていた。嬉しかった。佑月がこんなに慕われていることが。俺は、ずっと間違っていなかった。


「あ、そう。じゃあ瀬名も呼んできて〜」


「え。」
事務所のお偉いさん、を見る。