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話は遡ること数年前。
昔、まだ俺と佑月が研修生だったころ。
ファンの間で研修生の人気投票が行われ、俺は30位中7位、佑月は圏外だった。
それから、佑月が口をきいてくれなくなった。俺が佑月のそばに座っても、佑月はすぐに席を立ってしまう。間違いなく、避けられている。なんでだよ。拗ねてんのか?
「佑月。」
しびれを切らして、ある日、俺は佑月を呼び止めた。
「なあ、なんで最近喋ってくれへんの。」
佑月は全然口を開かない。
また席を立とうとする。その腕を掴む。
「なあって。」
「俺と一緒にいたら、お前までデビューできなくなる。」
「は?」
久しぶりに佑月の声を聞いた。
なんだ、そんなことか。
「それ、ほんまに言うてんの?」
「一緒につるむ奴は、選んだ方がいい。」
「きっしょ。」
俺は。
「俺は、お前がええねん。」
「でも、俺と一緒にいちゃダメなんだよ!」
「俺はお前としかデビューしたないねん」



