推しが隣に引っ越してきまして 〜月の裏がわ〜



「よっこいしょ。」
部屋のドアが開いて、大きな紙袋を持った佑月さんが現れた。


「何持ってきたんですか。」
佑月さんに声をかける。
「ん?」
佑月さんが俺を見て、袋の中身をズザァー!と畳の上にぶちまけた。

「何してんすか……?」

「すごいね、こんなにある。」
佑月さんが、ぶちまけられたそれを眺める。
「お前宛てのファンレター、事務所に届いてたやつ持ってきたよ。」

「え……?」
「あぁ、暑っ。シャワー浴びてくる。自転車でいったから汗かいちゃった。」

「この距離を?自転車で?」
「うん。」
「公演終わりに?」

「うんそう。」
佑月さんがお風呂セットを持って部屋を出る。

「体力どうなってんだよ、あの人。ぶっ飛んでる……。」


ファンレターの山に手を伸ばす。
”一ノ瀬巧くんへ。”
そっと封筒を開ける。