稽古は順調に進み、公演は本番を迎えた。約一か月間もある長丁場だった。
公演の期間、俺たちは、近くのホテルに泊まり込む。
その部屋にだれがいるか一目で分かるように名札が提げられる。
俺は、選抜組と同じ部屋だった。
今日から一か月間ここが家。札を前に気が重くなる。
その時、横からふと手が伸びてきて、俺の札を外した。心が重くなる。またハブられる。
見るとその手は、佑月さんだった。
佑月さんが俺の名前の札を、自分の部屋の前にかける。
「お前の部屋、ここね。」
「そんな勝手に変えて大丈夫なんですか。」
「大丈夫だろ。」
ほれ、と佑月さんが部屋のドアを開ける。
「大丈夫、みんないい奴だから。」
「ありがとうございます。」
ぺこり、と頭を下げる視界が滲む。



