16時。
この日初めての食事をとる。
いつもと何も変わらない。テレビを見ながら、美味しいね。って食べる。
ダラダラしていたらすっかり辺りが暗くなった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうかなぁ。」
「うん。」凛が、立ち上がった俺を見上げる。
「エントランスまでついてく。」
凛が部屋着のまま立ち上がる。
「ついでにコンビニ行きたいし。」
「うん。」
リビングを出て、凛が、サンダルをつっかける。
玄関のドアに手をかける。開けるのを躊躇う。これが、最後だ。
「ん?」
振り返って、凛を抱きしめる。
「今までありがとう。」
最後に出てきた言葉はこれだった。思わず、抱きしめる手に力が入る。
「佑月くん、痛い……。」
「あ、ごめん。」
抱きしめる力を緩める。
すると今度は凛が俺をぎゅって抱きしめる。
「こちらこそ、いっぱい愛してくれて、ありがとう。佑月くん、私と出会ってくれて、ありがとう。」
視界が滲む。何回も聞いた声。大好きな人の声。可愛い。離したくない。



