最後のデザートを食べ終え、机の上が綺麗に片される。広い部屋にふたりきりになった。
こたつに移動して、2人で入る。
「お茶飲む?」
「ん?」
佑月くんは私の言ったことにはちっとも耳を傾けていない様子で、私の顔をじっと見ている。
じっと見られると、なんか居心地がわるい。
「なに……?」
「ん〜?」佑月くんが私の頭を撫でる。
「かわいいなあって。」
机の上に置いていた手をぎゅっと握りしめる。
面と向かってそう言われると、いつまで経っても照れてしまう。
「世界でいちばんかわいい俺のカノジョ。」
私にとって佑月くんは、世界でいちばんかっこいい人。
嬉しくて頬が緩む。
「あ〜にこにこして可愛い〜」
佑月くんが目尻を下げて笑う。
愛おしいものを見るような目で私を見る。
2人きりになった途端、佑月くんの目尻はさっきよりもうんと下がって、その顔はふにゃふにゃしている。
「なんでそんなもじもじしてんの」佑月くんが笑う。
「だってなんか、2人になった途端、佑月くんが……」
佑月くんが、甘すぎて。
「ごめん、俺結構浮かれてる。凛の喜ぶ顔たくさん見れて嬉しい」
佑月くんがまた優しく笑う。
「誕生日っていう一番大切な日に、好きな人独り占めできてすごく嬉しい」
じわ、って視界が滲む。
「どうして泣くの〜」
佑月くんが浴衣の袖で私の目尻を拭う。
「私も佑月くんにいっぱいお祝いしてもらえて、すごく嬉しい。佑月くんを独り占めできて、嬉しい。世界で一番幸せ。」
涙がポロポロこぼれる。
「え〜泣かないで〜」
佑月くんが笑いながら、私の頬を撫でる。
今日がこんだけ幸せだから、もうなんでもいいや。
もしかしたら私今、幸せの前借りをしてるのかもしれない。この先の辛いことがあったら、きっと、それは今日の幸せと辻褄を合わせるために存在するんだと思う。
そうじゃないと、こんな幸せ、あり得ない。



