佑月くんと数秒見つめ合う。びっくりして固まっている私と、状況を飲み込めずにキョトンとしている佑月くん。
 佑月くんが首をかしげる。
 「あれ?俺部屋間違えた?」
 あ、えっと…ていうか、そもそも建物あっていますか?都心からちょっと離れた、月8万の1DK。こんなところに佑月くんが、なぜ?なぜ、あなたがここにいるの?
 「は~~~ダメだ俺、めっちゃ酔っぱらってるわ…。」
 佑月くんが、額に手を当てて、ふらふらと壁によりかかる。
 「酔ってる佑月くんレアだ……かっこいい……」
 佑月くんに私の声は聞こえなかったようで、壁に寄りかかってずっとシューシュー言っている。
 「あっ。」
 佑月くんが、玄関に置いてあった、佑月くんの写真に気がついて指をさす。
 「これ、この前のグッズじゃん!!」
 やばい。速攻でオタクがばれた。
 「え、お姉さん俺のふぁん!?」
 その目は据わっていて、呂律は回っていない。お酒の匂いがプンプンする。
 「お名前は??」
 佑月くんが、パァ……!と顔を明るくして聞いてくる。
 「あ、えっと、凛です」
 「凛ちゃん。いつもありがとう。」
 佑月くんが柔らかい笑顔で笑う。
 ひぃ……。佑月くんに名前呼ばれた。
 「なんで、こんなところにいるんですか?」
 「あー…今、ドラマの撮影中で……撮影期間だけ、近いとこに家借りて住むことにしたの。二拠点生活的な?あれ?ドラマ決まったってもう言っていいんだっけ?やべ、今の聞かなかったことにして。」
 佑月くんが、えへっ、って笑う。