2025年、4月。
 春の風がふわぁ、と吹いて、どこからか桜の花びらが舞い落ちてきた。毎朝使うバス停に向かっていた足を、川沿いの方に向ける。バスが来るまであと5分。ちょっと寄り道をしよう。
 バス停の近くに流れている川。その川沿いにはずらっと桜の木が植えられていた。少し前に満開になった桜は散り始め、風が吹くたびにその花びらが宙に舞う。
 「わぁ……」
 ぶわっと風が吹き、木々が擦れる音がして、頭上に桜が降り注ぐ。
 見惚れていたら、目の端をバスが横切る。慌ててバスを追いかけて、走る。幸い、間に合った。
 バスに揺られながら私は、この前のライブの光景を思い出していた。キラキラ光るステージ、レーザー、そして、佑月くんの、あの表情。