
それを伝えたかったから私の前に現れた。
納得はしてないけど‥‥ああ、もう会えないのも確か。
「‥‥‥‥」
事実を聞いた時は全身から力が抜けた。「膝から崩れ落ちる」という表現が、まさにぴったりな感じだった。
でも今は違う。悲しいことは悲しいけど、涙は出てこない。
なぜなんだろうかと、考えてみた。
彼は私を嫌いになったわけじゃなかった‥‥それが救いになっているのかもしれない。
だから今はできる事をしていくしかない。
泣き叫んでも、彼は戻ってこないんだから。
「‥‥‥‥」
また雨がポツポツと落ちてきた。
もちろん傘は持ってきていない。
田舎の一本道で雨宿り出来そうな場所もなさそう。
「‥‥‥‥」
ふん‥‥と、鼻を鳴らして空を睨む。
彼は無理して私にこの指輪を渡そうとした。だったら私だって無理しても構わないはず。
無理して‥‥私は前に進む。
それが彼の望みだから。
そして私の人生を歩んでいく。
でも残念、決してあなたの事は忘れないから。
あなたが私を思っていたその心ごと、私は生きていく。
だから‥‥私は大丈夫。安心して。
雨は本格的に降り始めたけど、私は雨宿りの場所なんて探さない。
ただ真っすぐ、歩いていくだけ。



