最後に彼は言った。
 
 この埋め合わせはいつかするよ‥‥って。
 

 次の週から彼はこっちに来る事はなかった。

 喧嘩したから顔を合わせづらいのかな‥‥って、その時は思った。でも二週目、三週目‥‥連絡もなく、ただ時間だけが過ぎていく。

 四週間‥‥一か月後に私は電話をかけた。

 通じなかった。使われておりません‥‥いつから?

 思い返してみれば、いつも連絡はスマホだった。

 電話番号以外は彼の住所、連絡先は知らない。実家は引っ越していてもうこの地元にはいない。

 仕事も、東京の商社という事しか分からない。彼の知り合いを探したけど、見つける事は出来なかった。

 そんなに私とはもう会いたくなかったの?

 彼の笑顔を思い出す度に胸が苦しくなる。

 『私の事なんて、何と思ってないんでしょ』

 あんな事、言わなきゃ良かった。

 時間を戻す事ができるなら、あの日に戻って謝りたい。

 でも‥‥そんな事ができるはずもない。

 自暴自棄な、ふわふわとした現実離れした時間が過ぎていく。

 そんな中、何人かの人が私に親切にしてくれた。

 先輩もそうだった。

 仕事で失敗した時、先輩は私を助けてくれた。そんな時、何処か先輩と彼の姿が重なって見えて‥‥

 一緒に何処かに行こうと誘われた時、私は反射的に首を縦に振ってしまってた。

 でも違う。

 先輩は彼じゃない。

 もう‥‥二度と会えない‥‥。私の不用意な言葉のせいで。