「じゃあ、また明日」

 「うん、またね」

 学校が終わって、駅まで一緒に付き合ってくれた真帆は、そこで自転車に乗って走って行った。

 その時は、昨日の男性のこのなんて、すっかりと忘れてた。

 だけど‥‥。

 「‥‥‥‥!」

 またその人を見つけた。

 反対側のホーム‥‥でも、一番端じゃなくて、少し中央寄りのベンチ。

 昨日と同じ格好、同じポーズで‥‥。

 「‥‥‥‥」

 別に同じ人を見たからと言って、変なことは何もない。

 下校時間と、会社から帰る時間が同じなだけ。

 それは分かってるけど‥‥昨日より少しだけ近い場所にいる男性の存在が頭から離れない。

 もしかしたら、顔が見えるかも‥‥。

 目を凝らしたけど、やっぱり見えない。

 目えているんだけど‥‥分からない。

 “‥‥上り電車が参ります‥‥危ないですから‥‥”

 そした昨日と同じアナウンスがあって、また私は電車の窓から彼を探す。

 「‥‥‥また‥‥いない‥‥」

 電車が動きだしたとき、あの人の姿は何処にもなかった。

 その時、私は思いだした。

 スーツの死神……。

 見た目は普通のサラリーマン。

 だけど、その人を見た人には何かの不幸が起きる……。

 「……」

 私はゾっとした。鳥肌が立つ……という感覚を初めて知った。

 まさかそんな……という気持ちで打ち消そうとしたけど、実際にあの人を見た時の違和感をそれで払拭する事は出来ない。

 「やだ……そんな……ほんとに?」

 電車にはたくさんの人が乗ってる。

 私だけが、あの人を見たわけではないと思う。

 だから……私は……違う。


 
 次の日、私は真帆にその事を言った。

 「え、本当に?」

 言った本人が信じられないって顔をしてる。

 「でも、本当に普通のサラリーマンが……」

 「そんな人、何処にでもいるんじゃないの? どこがおかしかったの?」

 「それは……」

 説明できない。

 でも……。

 「もう、分かったから。じゃあ、私も一緒に駅まで行ってみるから」

 「良かった……」

 「大袈裟!」

 真帆は呆れたように言ってたけど、私は心の底から安心した。