ぜんぶ、ちょうだい。




「……大人しく待ってるので、帰ってきたらご褒美欲しいです」



袖をつまむ手に、 少しだけ力を込めて呟いた。

すると――



「は?なんで?」



先輩の声。冷たい。



「先輩のケチ!」



思わず言い返すと、



「はいはい。手、離して」



……でも。



「でも、そこも好きっ……かっこいいっ!」



口が勝手に動いた。



「分かったから、こんなとこで大声やめようね?」



呆れたように言われて、ちょっとだけ、胸が痛くなる。
もうちょっと…… 私に希望持たせてよ。

だって、修学旅行なんて――

そんなの絶対、先輩にアタックする女の子いるじゃないですかっ!

あ!の!水元先輩も! 例外じゃないですよっ……!



「行ってほしくないぃ~……」



泣きそうな声で言ったら、



「さっきからなに? そもそも期待しないでって言ってるよな?」



ガッと、片手で頭を押される。



「うっ……横暴!」

「どっちが?」



離れていく先輩の背中。その距離が、やけに遠く感じる。

もうっ……!
いつになったら、 私のこと、意識してくれるんですかっ?

こんなに、こんなに好きなのに。
毎朝、昇降口で待ってるのに。
髪だって、メイクだって、全部、先輩のために頑張ってるのに。



だから、 帰ってきたら、
ちょっとだけでいいから――


私のこと、見てくださいねっ?