ぜんぶ、ちょうだい。




「こんなとこで突っ立ってなにしてんの?」

「清水…」



運よく通りかかった清水の腕を、 反射的に捕まえる。



「清水は今、好きな人いる!?」

「は!?なんだよ、いきなり!」



清水の顔が、みるみるうちに真っ赤に。

そういえば、私ばっかり恋バナしてて、 清水の話って聞いたことなかったな。



「教えてよ!」

「…い、いるけど。つーか、離せよ腕!」



バシッと振り払われる。

……暴力反対なんだけど?

でも、それよりも。

「いるけど」って、今言ったよね?



「じゃあさ、その好きな子は絶対に手が届かない存在だとしたらどうする?」

「そんなの…関係ねーだろ。なにを犠牲にしても自分のものにするよ」



その言葉に、私は思わず息をのんだ。

あれ…? 急に清水が真剣な顔。
私の目を、真っすぐ見てくる。

なに…? その目、いつもと違う。
いつものツッコミも、ため息も、どこにもない。



「…そ、う」



私の声は、自然と小さくなる。

清水の“好き”は、私の“好き”と違う。

私は、振られる覚悟で好きでいる。清水は、手が届かなくても奪いにいく。

その差が、なんだかすごく遠く感じた。



「で?何の話だよ?」



清水はフイっと目を逸らして、 少し恥ずかしそうにそう聞いてきた。