ぜんぶ、ちょうだい。




わぁ…ほんとに月とスッポン。
画面越しより、実物の方が断然美人だ。

長い黒髪がさらっと揺れて、制服のスカートのラインまで完璧で、歩くたびに周囲の空気が変わる気がした。

綺麗な人だな――そう思って見ていたら、

パチッと、目が合ってしまった。


やばい、逸らさなきゃ――と思うより先に、

その人は、私の方へまっすぐ歩いてきて、目の前でぴたりと立ち止まった。



「え、と…?」

「どっかで会ったことある?」



えぇ……。
初対面で、なんというコミュニケーション能力。



「あ、思い出したっ!かおが手振ってた子だ!」



“かお”―― 彼女が親しく名前を呼ぶ。泉先輩のことだ。

その響きだけで、胸がチクッとする。



「私たちが体育の日!覚えてない?」

「……あれ、ほんとに私に振ってたんですか?」



ほんとに? 信じられない。

だって、あれから何度も、朝の挨拶のときに「先輩、私に手振ってくれましたか?」って聞いたのに――

無視されるんだもんっ。