ぜんぶ、ちょうだい。




「それでね、その人モデルの仕事始めたらしい」

「…モデルねー。はは」



え? モデル!?



「インスタ見る?ほら」



ひまちゃんが、うなだれている私にスマホの画面を見せる。

長い綺麗なストレートの黒髪。凛とした顔立ち。可愛いというより、美人。

これは――泉先輩とお似合いだ。

画面の向こうにいるその人は、私が“なりたい”と思ってる理想の全部を持ってる気がした。



「泉先輩と同じクラスなの知ってた?」

「えっ!そうなのっ?」



ひまちゃんからの爆弾発言。


ひまちゃんのスマホを奪って、 もう一度しっかりとその元カノの顔を見る。

「返して~!」って、ひまちゃんの声。



「ん~…?」



あれ?この人って…。 もしかして…?



「――あ、この前泉先輩の仲良さげだった人」



隣からスッと現れた清水。



「や、やっぱり?」



この前、先輩たちの体育の授業。グラウンドの端で、先輩と喋ってた人。

遠くからじゃよく分からなかったけど、こんなに美人だなんて…。

画面の中の彼女は、まるで雑誌の中から飛び出してきたみたいに、洗練されていて、 先輩と並んだ姿が、自然すぎて。

……あぁ、これは“お似合い”だ。



「月とスッポンだな?」

「清水に言われなくても分かってます~…」



清水をキッと睨むと、大笑いする清水。

もう、ほんとひどい。
意外と私、傷ついてるんだからね。