「名前さ、なんだっけ?」
「…へ?」
え?え?え? どういう状況?
泉先輩が、私の名前を――知りたがってる?
泉先輩が?
「名前、教えて」
……え?ほんとに?
「よ、吉川小鞠です…」
声が震えた。
今更なのは分かってる。
だって、名前を伝えるタイミングなんて、今までなかったんだもん。
でも、やっと言えた。
泉先輩に、ちゃんと“私”を伝えられた。
すると先輩は傘を広げて、ポケットに手を突っ込みながら私を見た。
「吉川、傘入ってく?」
「え」
……え?
「どうする?」
「え!?何かの罰ゲーム!?」
あの、男子の嫌なノリですか!? 罰ゲームで“目障り”な私を傘に入れるとか、そういうやつ!?


