ぜんぶ、ちょうだい。




――えっ。

後ろから聞こえた声に、心臓が跳ねた。



「え…!?」



振り返ると、そこにいたのは――



「傘ないの?」

「……あ、はい」



泉先輩。

まさか、こんなところで会えるなんて。
心臓が、ドクンと大きく鳴った。

まって、まって、まって。
今日に限って髪ボサボサだし、リップも塗ってないし、顔もたぶん疲れてるし!

よりによって、こんなタイミングで!?

咄嗟にスクールバッグを降ろして、顔を隠す。

――盾。これは、スクバという名の盾。



「……。」



泉先輩は、何も言わずにこちらを見ている。その視線が、痛いくらいに刺さる。


まって、まって…?

かっ…!かっこいい~…!!

いつ見てもかっこいいけど、やっぱり、かっこいいよう…。

雨の中、制服の袖が少し濡れてるのに、そんなの気にならないくらい、泉先輩は、かっこいい。

でも――

昨日言われた言葉が、頭をよぎる。


……ああ、恥ずかしい。

今日の朝も、あえて行かなかった。挨拶しなかった。怖くて、気が引けて。

なのに、先輩から話しかけてくれた。

このチャンス。ほんとに、諦めていいの?

スクールバッグで顔を隠しながら、心臓がバクバクしてる。