ぜんぶ、ちょうだい。




一生引きずるままなら、一生片思いしてた方がいいんじゃない?

もし、泉先輩に彼女ができたとしても―― 好きでいればいいんじゃない?



「耐えられるかな…」



ぽつりとこぼれた言葉は、自分自身への問いかけだった。

アピールの仕方を変えたら、何かが変わるのかな。

でも、“うるさい。しつこい。目障り”って言われた人に、そんなこと通用する?

きっと、どうしたって、泉先輩の隣に立てる日はこない。

そう思うと、胸がぎゅっとなる。


最後のプリントをまとめて、ホッチキスでとめる。
カチン。小さな音が、静かな教室に響く。


でも、私――泣くほどじゃないんだなぁ。

泉先輩に、あんなこと言われても。あんなに冷たくされても。

ショックではあったけど、涙が出るほどじゃなかった。

それって、ほんとは心の底から好きじゃないってことなのかな。


ふいに、清水の顔が頭に浮かぶ。

「推しなんてものはな、遠くから眺めてるだけでいいんだよ」って言ってたっけ。

……推し。

憧れの存在で、見てるだけで満たされるような、でも、手が届かない人。

それって、恋とは違うのかな。


でも、それって―― 大分悲しいな。

はあ、ともう一度ため息。
窓の外を見ると、小雨が降りだしていた。


傘、持ってきてないのに。