ぜんぶ、ちょうだい。




「こまちゃん、ほんとにいいの?」



ひまちゃんにそう言われたとき、心配してくれてると思った。

でも、今考えると―― 少し、嬉しそうな顔してた気がするんだけど?

……もしかして、ちょっとだけ期待してた? 私がやっと先輩のことを諦めるんじゃないかって!


はあ、とため息をひとつ。

こんな風に、毎朝先輩と会えない日々が続いたら、いつかは忘れられるのかな。

そしたら、元の“泉先輩に出会わなかった日常”に戻れる?

私は―― 泉先輩がいない日々を、泣かずに過ごせる?



「……。」



失恋しても、時間が解決してくれるって、よく聞く。
でも、それってほんと?


恋愛経験のない私は、どうしてもそこまで踏み出せない。

だって、泉先輩のことを好きになった日から、 毎日が少しだけ特別になった。

朝が楽しみになって、 廊下で偶然すれ違うだけで、 一日がキラキラして見えた。


それを、全部なかったことにするなんて―― そんなの、できるわけない。