ぜんぶ、ちょうだい。




「こまちゃん!?」



吉川の隣にいた女子の声を、背中で聞き流す。
俺は、その横を追い抜いて、走った。

心臓が、うるさい。足音が、やけに大きい。


ムカつく。

なんで、逃げんの。


ざわめきが遠のいて、周りの音が、一気に小さくなる。


廊下を走る吉川の背中に、何度か声をかけた。

けど、止まる気配はなくて。

すれ違う人たちが、ちらちらこっちを見る。食堂に向かう途中の、「何事?」って顔。
それが、すごく嫌。


廊下の角を曲がった先で、ようやく見つけた。

壁のほうを向いて、肩で息をしながら立っている吉川。



「……なんで、逃げんの」



そう声をかけた瞬間、びくっと、肩が震えた。



「な、んで追いかけてくるんですか」



震えた声。
それでも、今も、俺のほうを見ようとしない。

その態度が、妙に突き放してくる感じがして。

一気に、イラっときた。