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文化祭が、明日に迫っている。
その日の食堂は、いつもよりざわざわしていて、心なしか、全員が浮足立っているように見えた。
「今日、どこで食べる?」
隣に立つ秦が、牛丼の食券のボタンを押しながら聞いてくる。慣れた手つきで、迷いもない。
「どこでも」とそっけない返事をして、俺はハンバーグ定食の食券を取った。
「中庭いこーぜ」
秦のその一言に、軽く頷く。
そして、振り返った、その瞬間。
秦の背中越し。食堂の入り口付近で。
――吉川と、バチッと目が合った。
一秒もないはずなのに、時間が、妙に伸びた気がした。
気まずそうに、吉川は手を小さく振った。
それだけ。それだけなのに。
すぐに、目を逸らされる。
……は。
なんだそれ。
「……は、ムカつく」
思わず、声に出ていた。自分でも驚くくらい、低い声。
「かお?」
秦が不思議そうに呼ぶけど、もう、そっちは見れなかった。
食券を、秦の手に押しつける。
「これ、頼む」
それだけ言って、俺は吉川のほうへ急いだ。
その動きを見た瞬間、吉川は、はっとした顔をして。
次の瞬間には、食堂を飛び出していた。
――逃げんなよ。


