ぜんぶ、ちょうだい。




俺に好きだなんて言いながら、この一か月、何してんだよ。

そう思ってしまう自分を、どうにも止められなかった。

急に避けるみたいに、俺の前から姿を見せなくなって。

あんな顔で、あんなこと言っておきながら。

正直、逃がすわけなんて、さらさらなかった。



「かお、これ終わったらラーメン行かね?」



隣から声がして、現実に引き戻される。



「アリ」



短く返事をして、また刷毛を動かす。

推薦で大学進学がもう決まっている俺と(はた)。二人で、文化祭に使う看板の色を塗っている。

他愛もない話。いつも通りの時間。

なのに、さっきから秦の話が、右から左へ流れていく。

聞いているつもりなのに、頭にはまったく残らない。

刷毛に含んだペンキが垂れて、それを慌てて伸ばす。



「かお、話聞けよ」



少し呆れた声。

分かってる。
分かってるけど。

それどころじゃない。