ぜんぶ、ちょうだい。


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吉川を見なくなって、気づけばもう一か月以上が経っていた。

時間が経つのは早い。そう思う一方で、「まだ一か月しか経ってないのか」とも感じる。

放課後の教室。
俺は残って、文化祭の準備をしている。一週間後に迫った、高校生活最後の文化祭。


やることは山ほどあった。正直、吉川のことなんて考えてる暇はなかった。
……なかった、って言いたいところだった。

でも、実際は違う。

修学旅行から帰ってきてから、吉川はどこかおかしかった。

理由は分からない。ただ、いつもと違うことだけは、はっきりと分かっていた。


そして、あの日。

つい、腕を引いてしまった。深く考えたわけじゃない。


つい、腕を引いてしまったあの日の、俺に好きと言いながらも泣きそうな顔の吉川がずっと頭にチラついた。
あの顔が、どうしても頭から離れない。

忙しくしていれば、忘れられると思っていた。
文化祭の準備に追われていれば、考えなくて済むと思っていた。