ぜんぶ、ちょうだい。




「俺以外に好きな人できたから、最近来ないの?」


「……へ?」



思わず振り向いた。
驚いた。
だって、先輩の表情が――いつもの無表情じゃなかったから。


どこか、苦しそうで。
眉間に皺を寄せて、まるで、私の答えを怖がっているみたいで。


“俺以外に好きな人できたから、最近来ないの?”

先輩、それ……どういう気持ちで言ったんですか?



「先輩、もしかして……寂しいんですか……?」



ドキドキしながら、勇気を振り絞って聞いた。

その瞬間。

パッと、先輩の手が離れた。

掴まれていた腕が、解放される。熱が消えて、急に冷たい空気に包まれる。


なになに?どういうこと?



「そうだけど、悪い?」


「……なっ……」



えっ……なっ……? なにそれっ……!?


先輩はふーっと息を吐いて、 少しだけ視線を逸らしながら、首元を触った。ほんの一瞬、照れたように。



「えっ……あのっ……」


「なに」


「えっと……えっ!?」


「そっちが聞いてきたんだろ」



いや、そうですけどもっ……!

心臓がバクバクして、頭が真っ白になる。