ぜんぶ、ちょうだい。




唇が荒れるまで、ずっと袖で拭った。

家に帰っても、水で何度も洗った。

それでも、消えてくれなかった。
清水のキスの感触が、皮膚の奥に残ってるみたいで、悔しくてまた泣いた。


思い出すたびに、イラっとする。
なんであんなことしたの? なんで、私の気持ちを無視したの?


でも、同時に―― 悲しくなる。

もう、元に戻れないのかなって。

友達だったのに。ずっと、そうだと思ってたのに。

清水は、そうじゃなかったみたい。


もうすぐ、泉先輩が登校してくる時間だ。

一週間ぶりに会える。ずっと待ってた。ずっと、楽しみにしてた。


なのに―― なんで、こんな気持ちにならないといけないの?


バッグを机に置くと、 視界に入る前の席。

清水の席。

清水のバカ! 今日、絶対に口をきいてやらないし、 もう絶交だから!

心の中で、机に向かってそう叫ぶ。