議論の最中、ドアの外でドンドンと叩く音が響く。

影の声が、複数の囁きとなって部屋に響く。

「還セ…還セ…」

ケンタがカメラをドアに向けると、隙間から黒い霧が侵入し、床を這う。

ミサキが叫び声を上げ、ユウトが机を投げて霧を払おうとするが、霧はケンタの足に絡みつく。

「うわっ、離せ！」

彼が暴れると、霧は彼の皮膚に染み込み、腕がみるみるうちに黒く変色していく。

「ケンタ！」

ユウトが駆け寄るが、ケンタの腕は内側から溶けるように崩れ、骨が露出する。

血と肉が床に滴り、彼の悲鳴が部屋に響く。

アカリは目を輝かせ、「これだ…儀式の血だ！」と呟くが、ミサキは嘔吐し、ユウトはケンタを支えようとする。

しかし、ケンタの体は急速に腐敗し、最後には目が白く濁り、動かなくなる。

カメラは倒れ、彼の崩れた姿を無情に映し出す。

「ケンタ…！」

ユウトが叫ぶが、アカリが冷たく言う。

「彼はもういない。けど、この血で儀式を進められる」

彼女の手には、ケンタの血で濡れた日記が握られている。

ミサキは震えながら、「アカリ…あなた、変だよ…何かおかしい」と呟く。

アカリの笑顔は、どこか狂気を帯びていた。