突然、廊下の奥からカサカサという虫の這うような音が響く。

ミサキがユウトの腕を掴み、「来る…来るよ!」と叫ぶ。

懐中電灯の光が届かない闇の先で、人の形をした「影」がゆらりと現れる。

それは、目も鼻もない顔に、裂けた口だけが異様に広がる姿だった。

体は腐りかけの肉のようで、動くたびにドロリと粘液が滴る。

「走れ!」

ユウトが叫び、4人は反対方向へ駆け出す。

だが、影は床や壁を這うように追いかけ、異様な速さで迫ってくる。

ケンタが振り返りながらカメラを向けると、映像に映る影の口が「オマエモ…」と呟くのが聞こえる。

「やべえ、マジでやべえ!」

ケンタの声が裏返る中、4人は理科準備室らしき部屋に飛び込み、ドアをバリケードで塞ぐ。

部屋の中は、埃まみれの実験器具や剥製が並び、ガラス瓶には得体の知れない液体が詰まっている。

アカリが息を切らしながら、「あれ、怨霊だよ。20年前の生徒たち…儀式で死んだ連中だ」と資料を握りしめる。

ミサキは膝を抱え、「私のせい…私が感じたから、目覚めたんだ…」と呟く。

ユウトが彼女を励まそうとするが、アカリが冷たく言う。

「だったら、ミサキが囮になればいいじゃん。そしたら逃げられるかもよ」

「何!?」

ユウトがアカリを睨むが、彼女は平然と続ける。

「冗談だよ。でも、儀式を完成させないと、この校舎から出られない。日記にそう書いてあった」

彼女がリュックから取り出したのは、地下の図書室で拾った古い日記だ。

そこには、儀式の詳細と「生贄の血で封印を閉じる」と記されている。