教室13番の扉が閉まった瞬間、校舎全体が低く唸るような振動に包まれた。

ユウト、アカリ、ケンタ、ミサキの4人は廊下に立ち尽くし、懐中電灯の光を頼りに互いの顔を見やる。

ミサキの頬には涙が流れ、彼女の腕には黒い霧に触れた跡が、赤く焼けただれたように残っていた。

「痛い…何か、頭の中に入ってくる…」

彼女が震える声で呟くと、アカリが苛立たしげに言う。

「ビビりすぎだろ！ ただの幻覚だよ、きっと！」

「幻覚！？ あの窓の手は何だよ！？」

ケンタがカメラを握りしめ、叫ぶ。

映像には、確かに無数の黒い手がガラスを叩く姿が映っていたが、今は静まり返り、窓の向こうにはただの闇が広がる。

ユウトが冷静を装い、「落ち着け。とりあえず出口を探すぞ」と言うが、彼の声にも動揺が滲む。

廊下を進むが、階段は見つからない。

代わりに、さっき通ったはずの1階への通路が、別の長い廊下に変わっている。

「…ここ、さっきと違うよね？」

ケンタがカメラをパンさせると、壁に新たな落書きが現れる。

「逃ゲラレナイ」

文字はまるで血で書かれたように赤く滲み、じわじわと広がっていく。