2階に続く階段は、所々が崩れ、埃まみれの手すりが不気味に揺れる。

アカリが階段の壁に刻まれた奇妙なシンボルを見つけ、スマホで撮影する。

「これ、呪術の紋章に似てる! 日記に書いてあったやつだ!」

彼女が手に持つのは、事前にネットで調べた「霧峰学園の謎」に関する資料だ。

そこには、20年前の事件が「生贄の儀式」と関連しているという噂が記されていた。

2階の廊下にたどり着くと、空気がさらに重くなる。

教室13番の扉は他の教室とは異なり、異様に黒ずんだ木製で、表面に赤黒い染みが滲んでいる。

「これ…血?」

ケンタが呟き、カメラをズームする。

ミサキが後ずさり、「やっぱりやめようよ…ここ、絶対おかしい」と訴えるが、ユウトは扉の取っ手に手をかける。

「ビビんなよ。俺たちが歴史を作るんだ」

扉が開くと冷たい風が吹き抜け、4人の背筋を凍らせる。

教室13番の内部は、まるで時間が止まったかのようだった。

机と椅子が乱雑に並び、黒板には白いチョークで「還リ来ズ」と殴り書きされている。

床の中央には、円形に描かれた複雑なシンボルが、薄暗い月光に浮かんでいた。

アカリが興奮してシンボルに近づき、指でなぞる。

「これだ…! 儀式の中心だよ! ここで何かが起こったんだ!」

だがその瞬間、ミサキが悲鳴を上げる。

彼女の足元で、床から黒い霧が這い上がり、彼女の腕に絡みつく。

「離して! 離して!」

彼女が叫ぶ中、霧は人の形に変わり、目がない顔がミサキを見つめる。

ユウトがミサキを引っ張り、4人は慌てて教室の外へ逃げる。

だが、廊下に出た瞬間、背後で扉がバタンと閉まり、鍵がかかる音が響く。

ケンタがカメラを振り返すと、教室13番の窓から、無数の黒い手がガラスを叩いているのが映る。

「何だこれ…! マジで何!?」

彼の叫び声が、廃校の闇にこだまする。