蓮とことはは、緑に囲まれた湖のほとりにやってきた。

風が心地よく吹き抜け、水面がキラキラと揺れている。

「……あれ、乗ってみる?」

ことはが指差したのは、貸しボート。

二人用の手こぎボートが並んでいる。

蓮は一瞬だけ渋い顔をしたけど、ことはの期待したような目を見て、小さくため息をついた。

「……わかった。乗るか」

「ほんと? やった!」

蓮がチケットを買ってくれて、スタッフに手を引かれながら乗り込む。

ことはがバランスを崩しかけると、すぐに蓮が腰を支えてくれた。

「おい、気をつけろって。落ちんぞ」

「う、うん…」

座席に落ち着くと、蓮がオールを握って静かに漕ぎ始めた。

ことはは、その横顔をそっと見つめる。

「ねぇ、蓮くんって意外と器用だよね」

「……ことはの前じゃ、頑張れるだけ」

ぼそっと呟いた言葉があまりにも自然すぎて、ことはは一瞬、何も言えなくなった。