電車の中

ことはは蓮の隣に座って、静かに窓の外を見ていた。

「どこに行くの?」

「ん、ちょっと遠出だ。街のほうじゃない」

「自然が多いところ?」

「着いてからのお楽しみ」

ふと、ことはの手の甲に、蓮の指が軽く触れた。


驚いてことはが顔を向けると、蓮は目をそらしたまま、手をそっと重ねてきた。

「……手、貸せ」

「えっ?」

「俺も……緊張してんだよ。ちょっとだけ、落ち着く」

その一言に、ことはは言葉が出なかった。

嬉しくて、くすぐったくて、ただ静かにその手を握り返した。