クールな総長は私だけにとびきり甘い

次の日

教室に入ると、ことははもう自分の席に座っていた。

窓の外を見つめるその姿は、いつもどこか遠くを見ているようで、蓮はつい息を呑んだ。

「……おはよう、蓮くん」

思わず声をかけると、ことははゆっくりと顔を上げて、小さく笑った。

「おはよう、ことは」

ことはのその笑顔に、蓮の胸の奥にあった小さな灯が、ほんの少しだけ強くなった気がした。

けれど、周囲の冷たい視線は相変わらずで、誰もが二人の距離を遠ざけようとしているのが分かった。

蓮はポケットの中の飴の包みを握り直しながら、決めた。

「……これ、あげる」

ためらいながらも飴を差し出すと、ことはは驚いたように目を見開いた。

「えっ……いいの?」


「ああ」

「あ、ありがとう」

ことはのその言葉が、蓮の心をじんわりと満たしていった。