道隆は自分の事務所で、またひとつの決断を下していた。
彼はどんな状況でも、冷徹に物事を進める人物だ。
しかし、今回は違った。
ゆいが決断を下すその前に、自分の手を動かさなければならないと強く感じていた。

「……もう、時間がないな」

道隆は電話を手に取ると、ある番号にダイヤルをかける。
その相手は、西園寺彰男――西園寺組の組長であり、竜也の父親でもある。

「道隆、何かあったのか?」
電話の向こうから、低い声が響く。

「少しだけ、動きが必要だ。今のうちに、準備を進めておいた方がいい」

道隆の声は、冷静そのものだが、その目には何か深い考えがあるようだった。

「ゆいのために、何かが始まる。それがどんな結末を迎えるかは、誰にもわからないが――」
道隆は言葉を切り、深く息を吸った。

「だが、もう一つの道は、選ばせない」

その言葉に、電話の向こうの西園寺彰男も答えた。
「わかっている。お前の動きに、俺も乗る」

道隆は電話を切り、再び机の前に座った。
この先、ゆいを守るために動き出さなければならない。
彼の決意は固く、今後の展開に暗雲が立ち込めていた。