「遅れないでくださいね。君の『狂犬』ぶり、楽しみにしていますから」 背中に向けられたその言葉には、親しみも怒りもなく、ただ実験動物を観察するような冷酷な響きだけがあった。 「……アイツ、マジで何?」 去っていく奴の背中を睨みつけながら、アタシは苛立ちを隠せずに腕を組む。 不気味なほどに整った顔。 底の知れない穏やかな笑顔。 そして、あの似非教師が言い切った謎の自信。 アタシの計算も狂わす、あの男の「目的」が何なのか。 この時のアタシは、まだ何も分かっていなかった。